インタビュー

CEDEC2016開幕直前インタビュー
~CEDEC運営委員会委員長、植原一充氏に訊く!

今年のCEDECはVR系セッションが熱い

ゲームを始めとしたコンピュータエンターテインメント全般の開発に携わるデベロッパ向けのカンファレンス「CEDEC」(Computer Entertainment Developers Conference)は、今年も例年通り、8月24日から8月26日までの3日間、パシフィコ横浜で開催される。
CEDECは今年で18回目の開催を迎え、昨年は3日間で224セッションが執り行われ、約6500人の来場者を記録した。いまやCEDECは、名実共に日本最大級の開発者向けカンファレンスとなっている。

今年の開催テーマは「Now is the Time!」。直訳すれば「今こそその時だ!」「時は来たれり」あたりになるだろうか。
今年の開催にあたり、CEDEC運営委員会委員長を務める植原一充氏にお話を伺った。


VR Now!を掲げ、VRに熱い今年のCEDEC

植原 : 昨年の参加者属性をまとめるとゲーム専用機向けの開発者が3割、スマホを中心とした携帯端末機向けの開発者が3割といった感じで、後者のスマホ向けの開発者の来場者が増えていて、近年ではゲーム専用機向け開発者と均衡しているという状況です。近年、盛り上がりを見せているVR(仮想現実:Virtual Reality)については、昨年時で十数セッションがありましたが、今年は、VR元年とも言われている関係もあって関連セッションは多くなっています。

開発者達の間では、2013年頃から盛り上がりを見せていたVR。
しかし、今年の盛り上がりは、過去の盛り上がりと1点、違う部分がある。
それは、今年の盛り上がりは、一般ユーザー向けのVR製品が市販化された(あるいはされる)ことに起因する盛り上がりだと言うことだ。高価だが性能に優れたOculus Rift、HTC VIVEは今年、2016年春に発売されたし、値段と性能のバランスに優れたソニーのPSVRは今年10月に発売される。低価格でカジュアルにVRが楽しめるGearVRは、今年春、Galaxy S7シリーズの予約購入特典者に無償プレゼントされるなどしてユーザー数を伸ばし、いまや全世界で100万人近いGearVRユーザーがいると言われる。
今年が「VR元年」と呼ばれるのは、今年が「VR Ready」な一般ユーザーが多くなることにも大きく起因しているのだ。

植原 : VRだけに限らず「コンテンツの開発に取り組む」「ビジネスに立ち上げ・挑戦する」…といった人に向けて「何か新しいことをするならば今(Now)だよ」というメッセージを込めて、この開催テーマを掲げています。とはいえ、タイミング的にはVRが一番ホットな時期であることは間違いないですね(笑)。

今年のCEDECのVRに対する取り組みは本格的なものになっている。
具体的には、「VR Now!」というロゴプログラムを実践する。
これはVRに関連したセッションには「VR Now!」のロゴを付帯させ、また、会場内に「VR Now!ラウンジ」を設置し、来場者同士、VR関連企業スタッフとの交流が図れるようにするという。また、「VR Now!」スポンサー企業による各種デモ体験コーナー、ソリューション展示コーナーも設けられる見込みだというからその熱の入り方は本格的だ。

植原 : VRが一般化することで、マネタイズやビジネス面での関心が高くなります。そこで、そういった方面のセッションも今年はありますね。たとえば、今年4月に期間限定でオープンしたVRエンターテインメント研究施設「VR ZONE Project i Can」のバンダイナムコエンターテインメントAM事業部の小山順一朗氏(コヤ所長)と田宮幸春氏(タミヤ室長)には招待セッションを担当していただきますし、パネルディスカッションのパネリストとしてそういったビジネス方面のお話もして頂く予定です。

VRは、今でこそ「エンターテインメントの新潮流」的な扱いを受けているが、それより以前は、教育分野、訓練用途、人間の五感の仕組みの解明に関する研究など、学術的な研究テーマとして長らく研究がなされてきた経緯がある。
今回のCEDECでは、そうしたアカデミックな現場からの公募セッションもあり、そうしたセッションは、VRに関する知識をより深い次元で学ぶにはもってこいなのだという。具体的には「VRはどこから来て、どこへ行くか」(筑波大学 岩田 洋夫)、「エンターテインメントVRに役立つアカデミックの知見」(東京工業大学 長谷川晶一/豊橋技術科学大学 北崎 充晃/電気通信大学 梶本 裕之/Unity Technologies Japan 簗瀬 洋平)、「視覚だけじゃない これからのVRシステム」(東京大学 鳴海 拓志/Unity Technologies Japan 簗瀬 洋平/大阪大学 安藤 英由樹)などが、そうしたセッションに該当するようだ。
VRを事業として中長期的に取り組んでいきたいという向きには、こうしたセッションは要チェックである。

植原 : 現在はVRといえばHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の話題になってしまいがちですが、大きな意味でのVRとはHMDに留まりませんよね。今後、コンピュータビジョン、マシンラーニング(機械学習)、ハプティクス(触覚学)などとも大きく結びついていくはずです。その意味で、今回は基調講演にカーネギーメロン大学の金出武雄先生にご登壇頂きますし、内耳への電気刺激で前後左右の加速度知覚を行わせる研究をされている大阪大学の安藤英由樹先生のセッション「前庭電気刺激」(大阪大学 安藤 英由樹/大阪大学 青山一真)もあります。。

今年のCEDECは、スポンサー枠を除いて招待枠と公募セッションで約120のセッションがあるそうで、このうち20がVRに何らかの形で関わりのあるものになるそうだ。聴講の予定の組み方によっては、一日全部、あるいは会期3日間全てでVR関連のセッションを聞くことも可能だというから楽しみだ。

植原 : CEDEC2013からVRのセッションはあるにはありました。当時は、「これからVRが盛り上がっていくよ」という夢を語るような内容が多かったのですが、今年は実際に事業としてVRに取り組んでいる先駆者達からの知見が数多く語られますし、先ほど述べたような、学術的な最新研究動向も知ることも出来ます。そして2013年時は空想に近かった「将来を語る」的な内容についても、今年のものはより実践的かつ現実的なものになっていると思っています。一言で言えば、今年のCEDECのVR関連のセッションは色々と「バランスのよいプログラム」になっていると思います(笑)。


学生に向けたプログラムも充実

CEDECは、基本的にはプロの開発者によるプロの開発者のためのカンファレンスだが、近年、学生の参加者の割合も増え、いまや全来場者の約10%弱を占めるようになっていると言う。
いまや、参加費には学割も設定されているばかりか、スポンサーセッションやエキスポなどに参加を絞ったチケットは3000円未満とかなり安価な設定となっており、CEDECの会期が夏休みということも鑑みれば、いまや、CEDECは学生も参加しやすいカンファレンスとなっている。

植原 : 会期中は、講演者控え室とは別に、講演終了後の講演者向けに講演者ラウンジを設置していて、ここで受講者がより深い質問を行ったり、あるいは名刺交換などが行えます。また、会期、二日目終了後には「Developers' Night」(http://cedec.cesa.or.jp/2016/event/developers_night.html)というパーティを例年通り、開催します。このパーティには講演者、業界の招待者などが参加しており、一般受講者との交流が行えます。プロの方達と知り合うには絶好の場と言えます。チケットには枚数限度があるので興味がある人は早めに入手して頂きたいですね。

この他、学生参加者には、大学の研究室や、学生プロジェクトの発表に活用されている「インタラクティブセッション」(http://cedec.cesa.or.jp/2016/session/INT/index.html)を是非チェックしていただきたいとのこと。このセッション形式では、「講演者と受講者」という通常セッション形式とは違い、発表内容の掲示やデモに対し、来場者と発表者とがリアルタイムに意見を交換できるセッションになっており、プロの開発者達からも率直な意見が聞けると言うことで、大学・専門学校の関係者には特に人気があるそうだ。

植原 : CEDECには、ゲームだけでなく「コンピュータエンターテインメントの世界で一旗揚げてやるぜ」と野望を抱いている強い心意気の人にはどんどん参加して欲しいですね。
それと、CEDEC2016の会期の前々日と前日の8月22日、8月23日の2日間、大学生や専門学校生向けに参加費無料の「ゲーム開発インターシップ」(http://hr.cesa.or.jp/internship/)が開催されます。「ゲーム開発に興味はあるが何をどうしていいかわからない」というような人にも気軽に参加いただけるゲーム開発体験プログラムです。プロのゲーム開発者から基礎事項を学ぶことができる貴重な機会なので、学生の皆さんには是非ふるって参加いただきたいですね。

なお、このインターシップは、2日間のコースなので、2日間連続で参加できることが参加条件となっている。場所はCEDECの本会場と同じなので、横浜にそのまま宿泊して、CEDECの本カンファレンスにもそのまま参加してしまうのもいいかもしれない。


植原 : もちろんCEDEC2016はVRだけではありません。従来のCEDECと同様に、一般ゲーム開発者向けのセッション、スマホゲーム開発者向けのセッションはもちろん、グラフィックス、ゲームデザイン、AI、ネットワーク、サウンドなど、各要素技術を取り扱った専門系セッションも充実しています。例年、参加して頂いた参加者には、これまで通りのCEDECを期待していただいて問題ありません。その中でも特に今年は、VR関連についての話題が多い…ということですね。是非夏の3日間、セッションや展示を通して、皆さんそれぞれのこれから役に立つ知見を持って帰って頂ければと思います!

早期割引は、7月31日まで。また、事前登録期間は8月17日までとなっているので、参加を決定している人は早めに行動を起こすことをお勧めする。その時は今だ! 「Now is the Time!」

ライター:西川善司

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