CEDEC運営委員会インタビュー

CEDEC 2017ゲームデザイン分野インタビュー ~VRやIoTなどの新技術を面白くする次の一歩を求む!

 8月30日から9月1日の3日間にわたりパシフィコ横浜で開催される「CEDEC(コンピュータ・エンターテイメント・デベロッパーズ・カンファレンス)2017」では、セッションの講演者を、2月1日から4月2日まで募集している。

 今回はCEDECのゲームデザイン分野におけるトレンドや、CEDEC 2017の公募で求めるトピックなどを、運営委員会で主担当を務める山田倫之氏に伺った。

山田倫之

――まずは自己紹介をお願いします。

山田氏 : 株式会社カプコン・モバイルでスマートフォンアプリを開発しています。CEDECでは3年前からゲームデザイン分野の担当になりました。

――ゲームデザイン分野ではどんな話題を扱うのですか?

山田氏 : ゲームデザインというと、企画立案から細かいデータの調整まで広いテリトリーがあるのですが、一番大事なところは、「こんなゲームにしよう」とスタートを切るところだと思っています。こういうことをやりたいというスタートを切ることで、技術、グラフィックス、世界観と、より細かい分野に仕事が広がっていきます。またその中にも、レベルデザインやシナリオなどゲームデザインの要素が必要になってきます。ユーザーの意見を聞きながら改善するというのもゲームデザインに含まれます。

――最近のCEDECにおけるトレンドはありますか?

山田氏 : ここ数年はスマートフォンが普及し、ソーシャルゲームやアプリがかなり発展してきたと思います。一昨年くらいまではスマートフォンアプリをどうビジネスに展開していくかという話が多かったですが、昨年くらいからはスマートフォンアプリでもコンシューマーゲームに負けないゲーム性のあるアプリが出てきました。

また、ハード面ではVRが出てきて、コンピュータエンターテイメント業界は大きな転換期を迎えていると思います。これからは、VRというすごい技術をもっと有効に活かさなければならなくて、それがゲームデザイナーに求められている役割だと思っています。

――やはりVRに注目が集まりますか。

山田氏 : 大きなキーワードだと思います。商品もいくつか出てきて、ユーザーはすごく衝撃を受けていると思います。ただ、VRを1つの大きなジャンルとして確立するためには、もう一歩踏み込んだ何かしらの工夫が欲しいと思っています。昨年はVRを一般の方へ紹介するという段階だったので、今年はもっと発展したものをみんなで発表しあう、という流れに期待しています。

――VRには技術的なことだけでなく、アイデアも重要になると。

山田氏 : 技術は常に最先端にあると思いますが、それを面白さに変換してユーザーに届けるのがゲームデザインです。技術に踊らされるのではなく、しっかりとした面白さに変換するという事例を知りたいです。それは今までのハードの進化と同じで、グラフィックスが綺麗になったら、その綺麗さを活かして、どう面白さを届けるかが重要です。

――VR以外で注目されるものはありますか?

山田氏 : スマートフォンアプリのこれからの展開です。現在主流のビジネスモデルは、基本無料でハードルを下げて、楽しんでいただく中で必要だと思った分のお金を払っていただく形です。このビジネスモデルをきちんと回すために、理論が必要だという話が業界内から出てきています。フィーチャーフォン時代からやられている方は、理論なしでも経験と実践でやっていたと思いますが、それがなぜ成功するのかを理論化して体系付ける研究もされています。

 昨年は招待セッションで、行動経済学を講演していただきました。経済学の視点から、ユーザーに熱中して喜んでいただくという理論の話でした。ゲームデザインの段階でそういうものを意識しているかどうかで、今後は大きく設計が変わってくると思います。

――学問的な切り口ですね。

山田氏 : そこで今年新たなテーマとして出したいのが、自己主体感です。自分が主体となってゲームを進めていく、自分だからこそ強いリソースが手に入った、ゲームを有利に進めているんだという感覚です。ゲームにユーザーがとても熱中してくれていたのはなぜかと分析したら、自己主体感という要素があったのです。ゲームは究極的にはメーカー側から提供されるものではあるのですが、その中でユーザーがこの世界を自分で楽しんでいるという感覚を持ってもらうのが重要だと思っています。

 開始のハードルを下げる、序盤の継続を狙う、より深く熱中してもらう、といった手法は、当たり前にやっていますが、掘り返してみると経済学や心理学を始めとした学問にも関わってくるので、それを体系づけたいわけです。もちろん、あまりにセオリーで固めてしまうとゲームデザインは面白くなくなってしまいますが、土台をしっかり固めた上で、どういう面白さを乗せるかというのもゲームデザインの設計の1つだと思います。その土台の部分はCEDECで手助けできるのではないかと思います。

――他に何か期待しているものはありますか?

山田氏 : 少し前から話題になっているIoTを、単なる道具として使うのではなく、生活に密着して馴染むようにするための応用事例です。生活がもっと楽しくなるとかいう方向で、ゲームデザインはお手伝いできると思っています。例えば家電を使うのは主婦が多いと思いますが、そういう方々にも喜ばれるゲームデザインとは何か。そういう発想は、ゲームにも活かせるのではないかと思います。ゲームデザインと言ってもゲームだけではなく、もっと広い視点でも考えて欲しいと思います。

山田倫之

――IoTはコンピュータエンターテイメント業界の外の方の話も聞けると面白そうですね。

山田氏 : コンピュータエンターテイメントと言うと、家庭用ゲーム機やスマートフォン、パソコンなど、デジタル世界の話というイメージがあると思います。しかし最近はIoTやeスポーツなど、外とのつながりも生まれています。昨年大きな話題になったポケモンGOも、ゲームはデバイスの中であっても、実際の舞台は現実世界に広がっています。リアル脱出ゲームなどもそうですね。今まではリアルな世界とコンテンツは切り分けられていましたが、だんだん融合してきています。自分の体と空間を使って遊ぶというのは、まさにゲームデザインだなと思います。

――CEDECというコンピュータエンターテイメントの開発者が集まる場所ですが、ゲームデザインという観点から見れば、そうでないものにも広がっていると。

山田氏 : そういう視点では、最近はゲーム開発者の間でアナログゲーム流行し始めています。アナログゲームのルールのデザインは、実はコンピュータエンターテイメントの設計の役に立つのではないかと思います。短い時間で遊んでも面白く、リアルに集まった人たちで面白さを共有できなければいけないものなので、すごく勉強になります。

――では最後に、ゲームデザイン分野に応募を考えている方に向けてメッセージをお願いします。

山田氏 : ゲームデザイン分野はノウハウとして貯めにくく、講演の形にしづらいかもしれません。それでもノウハウはタイトルの数だけあると思います。みんなが苦労している部分であり、特に若手には難しいものなので、もっとオープンにノウハウを共有していける分野にしていきたいなと思います。自分達が考えて生み出し、すごいと思っているものは、他の人にとっても本当にすごいもののはずです。多くのご応募を期待しております。

――ありがとうございました。


石田賀津男(フリージャーナリスト / http://ougi.net

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