ゲームAI技術20年の進化とこれから
講演形式
レギュラーセッション
講演時間
08月24日(金) 13:30 〜 14:30
資料公開
予定あり
受講スキル

ゲームAIに興味を持つ方、人工知能をゲームに導入しようと思っている方、技術責任者など、ゲームAIのこれからとこれまでを知りたい方に向けて講演とパネルをいたします。

得られる知見

ゲームAIのこれからの10年の展望

セッションの内容

 デジタルゲームの人工知能技術はこの20年進化しました。大きく分類すると、ゲームタイトルの中でリアルタイムに動かす「ゲームの中のAI」、ゲーム開発やサービスのバックエンドで動く「ゲームの外のAI」があります。「ゲームの中のAI」については、特に1993年から2012年までの急速の進歩の後、ゲームのオープンワールド化に対応に2017年までを費やし、それ以降はニューラルネットをはじめとする学習アルゴリズムの導入が行われました。「ゲームの外のAI」に関しては、ゲームエンジンやサーバーログによって収集したデータの解析や、自動デバッグ、品質保証のためのAI(QA-AI)、自動ゲームバランシングに注力して来ました。

 このゲームAI技術の歴史を一言で言えば、「ゲーム開発者が行っていたことを、AIが行うようになり、それがゲームの内部に実装される」ということになります。たとえば、2000年当時、キャラクターのたどるパスは多くのゲームでマップ内でポイントを打つことで作成していました。今はパス検索技術でゲーム内で動的に検索します。またキャラクターの配置は今でも手動で設定する場合が多いですが、大型ゲームではメタAI技術によって動的に決定されるようになっています。またキャラクターの思考はマップ毎、キャラクター一体毎にスクリプトで書かれていたところから、その場その時に思考を作り出す階層型タスクネットワークやゴール指向アルゴリズムによって置き換えられつつあります。このような変化がデジタルゲームそのものをよりスケーラブルな、よりダイナミックなものへと変化させて来ました。

 またこの2~3年では、ゲームのパラメーターやデバッグ、QAの分野、つまりゲームの調整分野にラーニング技術が使われつつあり、さらに自然言語処理がたどたどしくではありますが、導入されつつあります。

 本セッションではゲームAIのこの20年を振り返ることで、次のゲームAIの10年を展望したいと思います。

講演者プロフィール

三宅 陽一郎

株式会社スクウェア・エニックス

テクノロジー推進部

リードAIリサーチャー

<講演者プロフィール>

京都大学で数学を専攻、大阪大学大学院理学研究科物理学修士課程、東京大学大学院工学系研究科博士課程を経て、人工知能研究の道へ。ゲームAI開発者としてデジタルゲームにおける人工知能技術の発展に従事。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会チェア、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。著書に『人工知能のための哲学塾』『人工知能の作り方』、共著に『絵でわかる人工知能』『高校生のための ゲームで考える人工知能』『ゲーム情報学概論』(コロナ社)最新の論文は『大規模ゲームにおける人工知能─ファイナルファンタジーⅩⅤの実例をもとに─』(人工知能学会誌 2017年、AI書庫にて公開)

<受講者へのメッセージ>

デジタルゲームの人工知能は今、大きな曲がり角に差し掛かろうとしています。一つは学習アルゴリズムの導入、もう一つは「ゲームの外のAI」です。ゲームの外のAIとは、ゲームのタイトルに実装される「ゲームの中のAI」とは違い、ゲーム開発で使われる人工知能、たとえば品質保証やゲームバランシングのための人工知能です。この二つの変化は何によって引き起こされたか、われわれは一体どのような動きをするべきか、過去から未来へ向かうゲームのための人工知能技術の流れを、ゲストとのトークを交えて解説いたします。
長谷 洋平

株式会社バンダイナムコスタジオ

<講演者プロフィール>

2009年、株式会社バンダイナムコゲームスに入社。
エースコンバットシリーズ、鉄拳シリーズなどにゲームプレイプログラマとして携わる。
現在は開発中のゲームタイトルにリードAIプログラマとして携わりつつ、最新技術のリサーチや内製の汎用ゲームAIエンジンの開発も行う。

・過去講演、執筆
複数タイトルで使われた柔軟性の高いAIエンジン, CEDEC2015
プレイヤーに反応するだけのAIはもう古い!ゲームAIへのプランニング技術の導入, CEDEC2016
LOST REAVERSにおけるAI Directorの試み, CEDEC2016
人工知能の未来へ -全脳アーキテクチャ、ディープラーニングを用いた人工生命、ゲームAI-, CEDEC2016
汎用ゲームAIエンジン構築の試みとゲームタイトルでの事例, 人工知能学会誌 Vol.32 No.2
Perception Tree ~Behavior Treeを応用したお手軽、柔軟な環境認識システム~, CEDEC2017

<受講者へのメッセージ>


昨今、世間で注目を集めている人工知能技術。ニュースなどではよく見ても、ゲームに応用するとなると漠然としかイメージできない人も多いのではないでしょうか。少しでもその靄を晴らす手助けになればと思います。
森川幸人

株式会社モリカトロン

<講演者プロフィール>

AI研究家、AIゲームクリエイター、グラフィック・クリエイター。 モリカトロンAI研究所 所長。
モリカトロン株式会社 代表取締役。
株式会社ムームー 代表取締役。 主な仕事は、ゲームAIの研究開発、CG制作、ゲームソフト、スマホアプリ開発。 2004年「くまうた」で文化庁メディア芸術祭 審査員推薦賞、 2011年「ヌカカの結婚」で第一回ダ・ヴィンチ電子書籍大賞大賞受賞。 代表作は、
「アインシュタイン」「ウゴウゴ・ルーガ」(テレビ番組CG) 「ジャンピング・フラッシュ」「アストロノーカ」「くまうた」(ゲームソフト) 「マッチ箱の脳」「テロメアの帽子」「ヌカカの結婚」「絵でわかる人工知能」(書籍) 「ヌカカの結婚」「アニマル・レスキュー」「ねこがきた」など(iPhoneアプリ)

<受講者へのメッセージ>

ゲームAIのおもしろさ、将来性などをお伝えできればとおもっています
斎藤由多加

株式会社シーマン人工知能研究所

所長

<講演者プロフィール>

『The Tower』、『シーマン ~禁断のペット~』、『大玉』などの作品のゲームデザイン・プロデュースを手掛けた。
シーマン人工知能研究所では日本語の言語処理を手掛けている。
また「アップルコンピュータの研究家」でもあり、マッキントッシュに関する著書である、アップル日本上陸の軌跡を綴ったノンフィクション「林檎の樹の下で」(1993-1994にDIME誌に連載)が、2017年冬にコミックにて復刊。(光文社)

東京都出身、ゲームクリエイター
オープンブック 株式会社代表取締役社長。

<受講者へのメッセージ>

最近よく人工知能の開発をしている方々から(1999年当時に何故ドリームキャストであそこまでの人工知能を作れたのか?と)質問を受けることがあります。
でも、エンターテインメント業界の力とはそういうものだと思っています。
会場にいらっしゃる皆さんも全員持っておられると思いますが(製品として完成させ、お店に並べる力)、これはどんなIT業界の人にも負けることのない凄く大きな力だと思います。
実際、その裏には大きな苦労と工夫が必要になります。
それは何か?
それを今回人工知能の開発を通じて、エンターテインメント業界の人間が人工知能の開発をする現場にいながら思ったことを色々お話します。