CEDEC運営委員会インタビュー

CEDEC2023 サウンド分野インタビュー

サウンド分野 主担当 渡辺 量
──サウンド分野における最新の特徴を教えてください。

渡辺:

サウンド分野は、ゲームサウンドはもちろんのこと、広くコンピュータエンターテインメント全般のサウンドに関わる技術、表現、またそれに関わる環境構築やワークフローなどを取り扱います。
ゲームサウンドは主に、楽曲、効果音、ボイスに大別できますが、その収録・制作・編集といったクリエイティブだけでなく、環境構築、サウンドアセット管理、ワークフローやパイプラインの整備、実装における効率化の工夫といった、クリエイティブを行うための作業まで含まれています。
また信号処理、空間音響など研究・開発寄りの話題も取り扱っています。近年機械学習を利用したワークフローや音声合成の事例なども増えてきました。このようにアート、クリエイティブな分野からエンジニアリング分野まで内包しているのが最大の特徴です。

──この分野で特に求めているトピックを教えてください。

渡辺:

「ユーザーの状況に合わせた緻密なサウンドの変化・演出」が多様な手法や技術で可能になってきており、その演出効果に対しても注目が集まっています。
関連するトピックとしては、(プリレンダリング、リアルタイムを問わず)音響によるイマーシブな空間表現向上の事例や、インタラクティブミュージック演出および動的生成・合成などがあり、求めているトピックとなります。
併せて、近年肥大化し続ける制作物や実装に対しても、技術を活用しながらどのように対応していくか、業界の注目トレンドと言えるでしょうし、今後もこの流れは続くと思います。
関連するトピックとしては、インタラクティブ/ジェネレイティブなサウンド制御や発音の実装事例、機械学習やディープラーニングを活用した事例、開発ツール・オーサリング環境の自動化・効率化といったものが挙げられ、ぜひご応募いただければと思います。
コロナ後、私たちはリモートワークを「活用」する段階に入っている認識で、様々な人とコラボレーションを生み出したり、より新しく効率的なフローを生み出したり、想定した以上のクリエイティブが得られたり、そういった「活用」の事例があればぜひお話いただきたいです。

──ご自身の経験や過去の応募者の反応から、応募するメリットはどう感じていますか?

渡辺:

私自身の話になってしまいますが、「応募を決めた事」で、社内調整や、カオスに自分の頭の中だけにあった様々な取り組みをまとめていく作業が始まりました。
その過程で得られた経験については、振り返ってみても間違いなく価値があったと感じています。具体的には、日々の実績や成果を言語化/体系化しながら分かりやすく発信するための準備を行う事で、技術や自身が行ってきた事に対する理解が深まりました。また、付帯する情報や業界のトレンドについても詳しくなり、「応募することでスキルアップに繋がった」といっても過言では無かったです。
日々業務がお忙しい中、新しいタスクや目標の追加は難しい事と思いますが、ぜひご自身の中の敷居を下げて気軽に応募いただきつつ、「応募すること自体」も、ご自身のスキルアップに活用いただきたいと思います。

──CEDECでの登壇メリットについてはどう感じていますか?

渡辺:

「情報は発信する所に集まる」という事を、登壇で得られる多くのネットワークや、課題共有によって実感できたというご感想をいただく事はあります。
また、発信する事で、会社は違えど「同志」と呼べる同様の課題を持つ仲間が増え、勉強会やコミュニティとして醸成されていく事例もあります。ご自身がこだわり抜いた箇所や改善した箇所を発表する事で、その取り組みやチャレンジが言語化され、客観的になり、次の新しい挑戦へと進む棚卸しとして活用されているというお話もいただいた事があります。
今年はハイブリッド開催という事もあり、よりたくさんのディスカッションやフィードバック、交流が生まれる事を楽しみにしています。

──最後に、公募を検討している方へメッセージをお願いします。

渡辺:

エンターテインメントの「音」に関わる私たちにとって、シンプルかつ大切な役割としてあるのが「コントローラーを握って、または音を聴いて、体験している人の心を動かす」事だと思います。また、その感動や興奮/没入感を生み出すために日々皆様の技術力、センスが発揮されている事と思います。
音を通じて人の心を動かす事に熱意と興味を持って取り組まれている皆様の、様々な経験や知見をぜひご披露いただきたいです。
また、CEDECは技術寄りのカンファレンスとして知られているかもしれませんが、クリエイティブなセンスが言語化され、演出や設計に対してどのように効果的なアプローチを行ったか、といったお話もぜひお伺いしたいです。
自身の中で「当たり前」として日々行っている工夫や効率化も、業界の中で見た場合、誰かにとっての輝く知見の可能性があります。皆様が常日頃チャレンジされている事を、ぜひ発表いただき刺激や知見を交換し合う事で、ご自身の成長にも繋げていただきつつ、未来へ繋がるゲームサウンド表現の世界を広げていっていただけたら嬉しく、ご応募をお待ちしています。