CEDEC運営委員会インタビュー

CEDEC 2017運営委員長インタビュー ~あなたのExperienceは講演する価値がある!

CEDEC2017 中村樹之委員長

 8月30日から9月1日の3日間にわたりパシフィコ横浜で開催される「CEDEC(コンピュータ・エンターテイメント・デベロッパーズ・カンファレンス)2017」では、セッションの講演者を、2月1日から4月2日まで募集している。

 昨年開催された「CEDEC 2016」には、過去最多となる6,768人が参加。元々はゲーム開発者向けのカンファレンスとして始まったが、最近では映像業界や学術研究分野など異業種からの注目度も増しており、コンピュータエンターテイメントの枠を越えた交流もなされている。

 CEDECでは今年から運営委員会の体制が変わり、中村樹之氏が新たに委員長に就任した。「Breakthrough to Excellence!」というテーマを掲げる「CEDEC 2017」はどこを目指しているのか、中村氏にインタビューした。現在受付中のセッション講演者公募についても聞いているので、ぜひご一読いただきたい。


CEDEC2017 中村樹之委員長

――まずは自己紹介をお願いします。

中村氏 : 本職は株式会社セガゲームスで開発機材やツール・ミドルウェアなどの開発環境をサポートする部署のマネージャーを務めています。CEDEC運営委員会では昨年まで3年ほど副委員長を担当し、公募案件の審査、招待セッションの企画、セッションのタイムテーブル作成などを行うワーキンググループのリーダーを兼任していました。

――今年のCEDEC 2017を考える前の下地として、昨年のCEDEC 2016を振り返りたいと思います。昨年はどんなトピックがありましたか?

中村氏 : 2016年は「VR Now!」という特別企画を実施しました。多くのVRデバイス製品が市場投入され、まさにVR元年と言われた年でしたので、そのような状況に合わせたVR関連のセッションや、VR業界のキーパーソンによるパネルディスカッション、実際に体験ができるコーナーや展示ブースなどもありました。

 基調講演に関しては、カーネギーメロン大学の金出武雄先生と、ドラゴンクエストへの道~ドラゴンクエスト30周年を迎えて~ということで、堀井雄二さん、株式会社スクウェア・エニックス齊藤陽介さんの二組にご講演いただきました。おかげさまで両講演共に聴講者からは非常に高い評価をいただき、メイン会場も満席となっていました。

――来場者の傾向に変化はありましたか?

中村氏 : ここ何年かは、参加職種の傾向にほとんど変化がありません。2015年でゲーム専用機向けとスマートフォン向けの開発者がそれぞれ30%ほどで同じくらいの数になり、2016年もあまり変わりません。以前はパッケージゲームを作っていた会社も、今はスマートフォン向けのゲームも作っていたりしますので、この数字はゲーム会社の中で作っているゲームの比率になっているのかなと思います。

CEDEC2017 中村樹之委員長

――「CEDEC 2017」はこれからどのように進めていくのでしょうか。

中村氏 : 年明け早々から基調講演や招待セッションの企画検討などは始まっています。公募セッションの採択状況が確定する5月くらいになると、公募内容の傾向などを勘案し、より具体的な企画検討が進められていきます。また2月には米国で「GDC(Game Developers Conference)2017」がありますので、そちらでのセッション内容や傾向も参考にしつつ、GDCの運営メンバーとも意見交換をしています。

――求めるトピックの中でも、注目度が高いものは何でしょうか。

中村氏 : 講演者公募のご案内-CEDECセッション分野定義 に、各分野の今年特に注目するトピックというものが掲載されています。
細かい項目はここでは割愛させていただきますが、是非一度ご覧いただければと思います。

CEDECセッション分野定義
http://cedec.cesa.or.jp/2017/koubo/field.html

CEDEC 2017全体としては、やはり引き続きVR/ARなどの新しい技術やサービスは注目していきたいと思っています。新たに市場展開が始まるデバイスもあり、自ずと扱う件数も増えていくのではないかと思います。ここ数年AI関連も活発な動きを見せています。人工知能学会と連携したコラボセッションを何年か続けていますし、専門分野の先生をお招きしたりしました。今年はディープラーニングの更に具体的な活用事例などが見えてくると良いかなと思います。あとは何と言っても今年は任天堂さんから新しいゲーム機としてNintendo Switchが発売されますので、こちらも非常に楽しみですね。

 先程お話した、各分野で求めているトピックと関連しているものとして、CESAゲーム開発技術ロードマップを2009年から毎年発表しています。
CEDEC運営委員会にてセッション分野ごとに検討を重ねたもので、ゲーム開発に関わる様々な技術における最新の動向と、近い将来に活用される可能性のある内容をロードマップとして紹介しています。

CESAゲーム開発技術ロードマップ2016年度版
http://cedec.cesa.or.jp/2016/outline/roadmap.html

――このロードマップは何を目的に作られているのですか?

中村氏 : 今、ゲーム業界の中ではどのようなテクノロジーが重要視されていて、今後はどうなっていくかというのを、ゲーム業界内外の人を含めて議論できるきっかけを提示しようというものです。今のトレンドとこの先のトレンドをわかりやすく見せていこうというもので、ゲーム業界に限らず、コンピュータエンターテイメントに関わる業界の方々に幅広く見ていただきたいですね。

――公募の際には、合わせて見ると参考になりますね。

中村氏 :はい。 議論を深めたり、何かの指針になれば良いなとは思っていますが、求めるトピックやロードマップにないものは受け付けないということではありませんので、誤解の無いようにしてください。あくまでも参考としてご覧いただければと思います。

CEDEC2017 中村樹之委員長

――CEDEC 2017で講演するメリットを教えてください。

中村氏 : 直接的なメリットとしては、CEDEC 2017を3日間受講できるレギュラーパスの進呈と、講演者と関係者だけのウェルカムパーティに無料で参加できます。しかし最大のメリットは、今まで関連のなかった人との繋がりが持てるようになること、その機会が増えることだと思います。講演内容に共感していただける方との人脈が広がることによって、自分に集まる情報の質や量がものすごく上がります。自分が講演をしたことで、情報を発信した以上のものが自分に返ってくるというのが最大のメリットだと思います。
また、CEDECで講演をすると、なぜか社内での情報共有が進むという話もよく聞きます。大きな会社になるほど、チームや部署を越えての繋がりを作ることが難しいと思いますが、講演の内容がWebやSNS経由などで社内の誰かに伝わり、それがきっかけで他部署の方と連絡を取り合うようになり、技術情報やツールなどの共有ができるようになりました。というような話です。

――今年のテーマ「Breakthrough to Excellence!」の意図を教えてください。

中村氏 : ものをつくる上では、チャレンジ精神が一番大事だと思っています。新しいことに挑戦するという意識を常に持っておこう、というところからテーマを考えて、それをどう表現しようかと考えたときに、ブレイクスルーという言葉が思い浮かびました。何か新しいものができたらそれで終わりなのか、いや、さらにその上があるはずだ、常にブレイクスルーしないと新しいものは生み出せない……ということで、今年はこのテーマで行きたいなと思いました。 私達も日々、多忙な業務に追われる中で、無意識のうちにできない理由、やらずに済ませる理由から先に考えてしまいがちですが「これはこういう理由で難しい、やりたいけれどできない」と言うのではなくて、「どうやればできるんだ?」という視点で常に考えて欲しいなという思いが込められています。

――最後に、公募を考えている方、興味を持っている方に向けて、メッセージをお願いします。

中村氏 : 「自分の能力はそれほど高くない」、「これは人に言うほどのことじゃない」、と思っている方は結構多いと思います。でもそれは他人にとってはものすごくいいアイデアだったり、有益なことだったりということも多いので、「自分の殻に閉じこもらないで、どんどん出していこう」と言いたいです。あなたがやっていることは思っているより凄いことかもしれない。そういうことは結構ありますから、もっとアピールして欲しいですね。そのような積み重ねが、業界全体の未来に繋がっていくはずです。

 CEDEC運営委員会は皆さんからの公募を中心にセッションや展示をコーディネートするだけで、主役はあくまでも講演者です。今年のCEDEC 2017を皆さんが作ると言っても過言ではありません。是非とも恐れずにチャレンジしてください。多数のご応募をお待ちしております。

――ありがとうございました。


次回からは各セッション分野プロデューサーのインタビューを順次お届けします。
お楽しみに!

石田賀津男(フリージャーナリスト / http://ougi.net

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