ゲーム開発資料保存と活用の広がり - 著作権など法的問題から展示会開催のプロセスまで -
三宅 陽一郎
尾鼻 崇
松田 真
- セッション分野
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BP(ビジネス&プロデュース)
- セッション関連分野
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AC
- 対象プラットフォーム
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コンシューマモバイルPCアーケード
- セッション難易度
- 求められるスキル
- ゲーム保存資料の活用に興味のある方、およびそれを出版・展示などを通じてビジネスに活かしたい方
- 得られる知見
- ゲーム開発資料に関連する課題のリスト、それに対する展示・法律の専門家からの知見
- 写真撮影 / SNS投稿
セッション内容
ゲーム開発資料保存について各開発会社が、その物理的資料が失われる前に、デジタル化を含めて保存に取り組んでいる。こういった資料を社会的に公開し、各企業の文化を伝えることで、開発の資料を資産へと変える企業活動として、ゲーム企業から社会一般に向けて展示や出版なども盛んに取り組まれている。本セッションは、そういった活動の中で課題となる展示会開催のプロセスから著作権など法的問題まで問題を取り上げ、明文化し、既に取り組んでいる、またこれから取り組もうとしている企業の役に立つ解決策を提示するものである。
全体の構成としては、企業から1名、実際に企業内で保存活動をしている立場から課題を提示し、展示、法律の専門家2名からその課題に応える形で講演を行う。
一つ目の展示に関する専門的な講演について以下、内容の解説を行う。近年、ゲーム資料を用いた展示が増加傾向にあるばかりか、ゲーム会社がミュージアムを設立する時代になってきた。ゲーム展示は新作商品のプレゼンテーションだけでなく、資料を後世に保存し活用する時代になってきている。発表者はこれまでに数多くの産学官連携によるゲーム展示を手掛けてきた。例えば2024年に開催した「のこす!いかす!!マンガ・アニメ・ゲーム展」では、失われつつあるレトロなアーケードゲームを守るため「動態保存」に注視した展示を行い、またゲームの関連資料の重要性を示すために株式会社タイトー様が保管する『スペースインベーダー』の開発資料をお借りして展示を行っている。本発表では、産官学連携によるゲーム資料の展示と、国立美術館が進める中間生成物保存推進という発表者の2つの立場から(1)産業界の外側からゲームを展示するメリット(プロモーションとは異なる形での展示実践とその成果)やその課題を整理し(2)日本が誇る文化財としてゲーム資料を保存する意義についてお話しさせて頂く。ゲームの展示会には資料が必要であり、また、一品物の現物ではなく複製物を展示することもあり得る。展示や複製など、資料を活用する様々なシーンで著作権などが働くが、権利者である会社が倒産するなどして、展示にまつわる許諾をそもそも受けようがないケースも考えられる。その際の対応策の1つとして、権利者不明等の場合の裁定制度がある。また、権利者不明「以外」の場合にも使い得る裁定として、未管理公表著作物等の裁定制度が新たに創設された。こういった詳細について専門家とその経験からお話しさせて頂きます。
二つ目の法律に関する専門的な講演について以下、内容の解説を行う。ゲーム会社の外に目を向けると、一般的な資料の保存・活用の場として博物館や図書館が既に存在する。ゲーム関連資料の場合、パッケージの保存は国会図書館などが既に行っているが、新たに国立映画アーカイブでの中間開発資料の保存の動きが出てきている。活用面では、ゲーム会社自身がミュージアムを作る時代に突入したと言える。産官学に渡って、ゲームや開発資料の保存・活用の大きな動きが始まっている。そこで本講演では、「ゲームの展示」「ゲームの博物館」「ゲームの図書館」も視野に入れて、資料の保存・活用のための合法的で利のある取扱いについて解説する。
このように本講演はゲーム産業内外、展示、法律など、ゲーム資料保存・展示・活用に関わる全般的な知見を提供するものである。
講演者
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三宅 陽一郎
株式会社スクウェア・エニックス
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尾鼻 崇
立命館大学 / 一般社団法人ゲーム展示協会 / 独立行政法人国立美術館
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松田 真
松田特許事務所 / ゲーム寄贈協会 / ゲームギフト図書館