最優秀賞・特別賞
総評
CEDEC AWARDSの開催にあたり、改めてゲーム業界における多様性の広がりと、技術的な進歩を実感いたしました。
エンジニアリング部門で『GitHub Copilot』が受賞したことは、AI技術がいかに私たちの開発プロセスを変革しつつあるかを示す良い例ではないでしょうか。コード作成の効率化は、開発者に創造的な余地をより広く与える可能性を秘めています。
ゲームデザイン部門では、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発チームが受賞、タイトルが持つ独創的なゲームデザインとそれを実現する開発力が高く評価されました。サウンド部門では『ストリートファイター6』が実現したサウンドアクセシビリティと自動実況機能が様々なプレイヤーから評価され、開発チームが受賞となっています。またビジュアルアーツ部門では『グランブルーファンタジー リリンク』開発チームが受賞、原作ファンを納得させる3D化技術とUIデザインが高く評価されました。これらの作品がCEDEC AWARDSを受賞することは、それぞれのタイトルが業界に与えた影響を物語っており、才能溢れるゲームクリエイターたちの努力と、それを支えるプレイヤーの存在があることを再認識する良い機会となりました。ゲームを愛し、遊び、支えてくださる全ての方々に心から感謝申し上げます。
来年も更なる高みを目指し、ゲーム業界のさらなる発展を願いつつ、本年のCEDEC AWARDSにご参加いただいた皆様、受賞された皆様に改めてお祝いを申し上げます。ありがとうございました。
CEDEC2024 運営委員会 委員長 金井 大
最優秀賞
AIによるコーディング支援でのエンジニアの生産性向上に寄与
GitHub Copilot 開発チーム(GitHub)プレゼンターからのコメント
『GitHub Copilot』開発チームの皆様、この度はエンジニアリング部門 最優秀賞の受賞、誠におめでとうございます!AIを活用したペアプログラマーとして『GitHub Copilot』を導入することで、開発者はコーディングの生産性を高め、複雑なロジックに集中できるようになりました。
AIを活用したコーディング支援環境をいち早く整備することで、ソフトウェアの構築をサポートする便利なツールとして、実際に多くの開発現場で活用されるに至っています。出力されるソースコードの精度の高さや、使い勝手の良さにより、受講者の皆様からも評価いただけたのかなと感じております。
改めまして、GitHub Copilot 開発チームの皆様、最優秀賞の受賞おめでとうございます。
ノミネート理由
GitHub CopilotをAIペアプログラマーとして導入する事で、コーディングの生産性を高め、複雑なロジックに集中できるようにして優れたソフトウェアの構築をサポートするという、その取り組みを評価。
クリエイティブに創意工夫して攻略できる自由度を許容するゲームデザイン
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発チーム(任天堂株式会社)プレゼンターからのコメント
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発チームの皆様、ゲームデザイン部門 最優秀賞の受賞、誠におめでとうございます。
ゲームデザインという分野では、常にプレイヤーの期待に応えるだけでなく、その期待を超えた驚きと感動を届けることが求められています。
昨今の多様かつ競争の激しい市場の中で、そのような体験を届けることは困難を極めますが、 今年のゲームデザイン部門の受賞作品は、どれもがプレイヤーから高い評価を得た素晴らしい作品が並びました。
その中でも本作は、続編という際限なく高まった期待に対し、見事に応えてくださった作品です。
上空、地上、地底のフィールドをシームレスに繋ぐことで実現した「縦の遊び」によって広がった世界。
そこに「ウルトラハンド」や「スクラビルド」という、プレイヤー自身による「創作の遊び」が掛け合わさったことで、 まさに「掛け算の遊び」をかつてない自由度と共に実現してくださいました。
こうしたすべての「遊び」が絶妙に絡み合い、一つの体験へと統合されたゲームデザイン。 それこそが、今回多くの票を集め、最優秀賞に輝いた理由だと考えています。
また、この3日間のセッションにて、開発チームの皆様がその工夫と研鑽の過程を惜しみなく共有してくださったことに、心からの感謝を申し上げます。 この貴重な知見は、我々すべての開発者にとって大きな資産になると信じています。
今後も「驚きと感動に満ちた新たな遊び」を届けてくださることを、楽しみにしております。 改めまして、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発チームの皆様、最優秀賞の受賞おめでとうございます。
ノミネート理由
新要素である「ウルトラハンド」,「スクラビルド」により、前作の遊びがさらに拡張され、プレイヤーの発想次第で攻略性が大きく変化するゲームデザインを高く評価。また、上下のダイナミズムを大胆に活かし、新たな発見を連鎖的に生み出すステージデザインも非常に秀逸である。オープンワールドアクションとして、すべての要素が高品質にデザインされていることは素晴らしいの一言。
© Nintendo
サウンドアクセシビリティ機能と、自動実況機能による、より幅広い層へ格闘ゲームファンを広げる表現の手法と技術
『ストリートファイター6』サウンド開発チーム(株式会社カプコン)プレゼンターからのコメント
『ストリートファイター6』サウンド開発チームの皆様、最優秀賞の受賞、誠におめでとうございます。
新たに制作されたアクション効果音は、快適に判別しやすく、かつ爽快感を両立しており、素晴らしく秀逸なデザインでした。また、今作から搭載された対戦の自動実況機能は、まるで自身がプロゲーマーになったかのような気分を味わえ、配信動画を視聴するユーザー達をも惹きつける魅力がありました。
さらに、サウンドアクセシビリティ機能においても、本作は他のタイトルと比べて特に先進的な実装がされています。視覚に障害をお持ちの世界中の格闘ゲームファンに向けて、視覚情報がなくても本作の競技性や楽しさを十分に味わえるよう、さまざまな工夫と機能が導入されました。これらの取り組みは、多くのヒアリング結果に基づき、業界をリードする形で実現されました。
「より多くの方々に、自分たちが作ったゲームを楽しんでもらいたい」という、開発者であれば誰しもが持つ理想と願望を、長い歴史を持つシリーズの最新作で見事に実現されたことが、多くの人々の共感を呼び、最優秀賞の受賞につながったのだと思います。
前例の少ない中でのチャレンジを、そのチーム力と開発技術で乗り越え、より幅広いユーザー層に格闘ゲームの楽しさを届けた開発チームの皆様の今後のご活躍にも、大きな期待を寄せています。
改めまして、『ストリートファイター6』サウンド開発チームの皆様、本当におめでとうございます!
ノミネート理由
搭載された自動実況機能は、プレイヤーのモチベーションを維持するきっかけとなり、サウンドアクセシビリティ機能により視覚障碍者の方も楽しめる等、格闘ゲームファンの裾野を広げることに成功しているだけでなく、高いクオリティのサウンドと演出が、新世代の格闘ゲームといえるサウンドデザインを実現している点を評価。
© CAPCOM
原作ファンを納得させる3D化技術とUIデザイン
『グランブルーファンタジー リリンク』開発チーム(株式会社Cygames)プレゼンターからのコメント
『グランブルーファンタジー リリンク』開発チームの皆様、このたびは最優秀賞の受賞、誠におめでとうございます。
本作は原作スマートフォンゲームの魅力を他プラットフォーム上で見事に表現し、さらに新たな魅力を創出された点が、多くの開発者から高い評価を得ました。 特に印象的だったのは、原作キャラクターの3Dモデル化における繊細な作り込みです。2Dの魅力を保ちつつ3Dならではの表現力を加えられた技術に、開発者はもちろん、プレイヤーの皆様も感銘を受けたことと思います。
ユーザーインターフェースにおいても、本作の世界観に違和感なく没入できる操作性を実現され、IPファンがスムーズに楽しめる作りとなっており、ユーザー体験への配慮を随所に感じることができました。 IPのコンテキストを大切にしながらプラットフォームの特性を活かされた本作は、今後の類似プロジェクトにおける新たな可能性を示してくださったものと考えます。明日のCEDEC最終日では本作に関するセッションが8件予定されており、そちらも大変楽しみにしております。
改めまして、『グランブルーファンタジー リリンク』開発チームの皆様、最優秀賞の受賞おめでとうございます!
ノミネート理由
原作のキャラクターデザインを丁寧に3Dモデル化し、魅力的な表現として落とし込んでいる。また、UIについても分かりやすくユーザーにストレスを感じさせない作りになっており、原作アプリゲームをプレイしていたユーザーが違和感なく没入できるような操作性を実現している。IPファンのことを第一に考えた設計に非常に好感が持てるものであり、スマートフォンタイトルを元にした据え置き機タイトル開発の手本となるような事例となっている。
特別賞
さくまあきら 氏
授賞理由
さくまあきら氏が手掛けた作品群は幅広い層のユーザーに愛され、中でも国民的人気を誇る「桃太郎電鉄シリーズ」は、そのシンプルながら深いゲーム性で 30 年以上にわたり多くのプレイヤーに支持され、新しいユーザーを獲得し続けてきました。日本のご当地について学べるこのシリーズは、ゲームの枠を超えて教育分野にも応用されており、最新作である「桃太郎電鉄ワールド 〜地球は希望でまわってる!〜」ではその舞台を日本国内から全世界に広げることにより、更なるユーザー層へのアプローチを実現すると共に、本シリーズがもつ新しい可能性を示してくれました。
コメント
私は50年間、編集者、ライター、出版プロデユーサー、漫画原作者、作詞家、歌手、音楽プロデユーサー、代理店、コピーライターとさまざまな肩書きをつけて、マスコミ関係で仕事をしてきました。
今回の受賞で、天下晴れて、ゲームデザイナーと名乗れそうです。ありがとうございます。
また『桃太郎伝説』、『桃太郎電鉄』を一緒に立ち上げてくれ、いままたいっしょにゲームを作ってくれている桝田省治(ますだしょうじ)に感謝です。
今後も、尊敬する伊能忠敬の現代版を目標にして、精進していければと思います。
プロフィール
1952年、東京都生まれ。ゲーム制作者、ラジオパーソナリティー、放送作家、歌手、作詞家、マンガ評論家。小池一夫氏の劇画村塾第1期生。立教大学在学時よりライター活動を開始し、アニメ雑誌『OUT』の投稿コーナーや『週刊少年ジャンプ』の読者ページ「ジャンプ放送局」の構成などが人気を博する。1987年に『桃太郎伝説』で初めてゲーム制作に携わり、1988年には、現在まで続く人気シリーズとなる『桃太郎電鉄』を制作。2020年に発売された『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』は、累計販売本数が400万本を、2023年11月に発売された『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』は、100万本を突破している。さらに、2023年からはノートPCやタブレット端末で動作する『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』を、学校教育機関へ無償提供。日本全国で7,000校以上(このうち小学校は4,000校以上となり、全国の小学校の約20%に相当)に導入が進んでいる。(※販売本数、普及学校数は、いずれも2024年3月時点)
さくまあきら 氏
CEDEC AWARDS 2024 ノミネーション委員会
エンジニアリング部門
進行(責任者) 西田 綾佑 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 片桐 誉裕 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 渡部 心 CEDEC運営委員会
委員 中原 勇 株式会社スクウェア・エニックス
委員 野口 高志 株式会社ポケラボ
委員 松本 浩太 株式会社セガ
委員 江藤 健汰 日本AMD株式会社
ゲームデザイン部門
進行(責任者) 水野 崇志 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 松永 純 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 知久 温 CEDEC運営委員会
委員 山田 政明
委員 三宅 俊輔 TECOPARK株式会社
委員 鈴木 良太 株式会社スクウェア・エニックス
委員 薮下 剛史 株式会社カプコン
サウンド部門
進行(責任者) 渡辺 量 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 金子 貴紀 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 木幡 周治 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 増野 宏之 CEDEC運営委員会
委員 北谷 光浩 株式会社バンダイナムコスタジオ
委員 小堀 修一
委員 小西 悠介 プラチナゲームズ株式会社
委員 絹谷 剛 株式会社スクウェア・エニックス
ビジュアルアーツ部門
進行(責任者) 藤巻 亮 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 太田垣 沙也子 CEDEC運営委員会
進行(世話人) 山城 拓巳 CEDEC運営委員会
委員 佐藤 逸人 株式会社スクウェア・エニックス
委員 畠山 耕一
委員 荒井 悠太 株式会社コロプラ
委員 初海 健 株式会社グリオグルーヴ